コラム

COLUMN

運動中や運動後に起こる頭痛。一次性運動時頭痛の原因・予防・対策とは?

「激しい運動をしていると頭が痛くなる」「ヨガやランニングなどの運動後に頭痛がする」
こうした運動中や運動後の頭痛にお悩みの方は、一次性運動時頭痛の疑いがあります。

一次性運動時頭痛とはどんな頭痛なのでしょうか?そこで今回は、一次性運動時頭痛の特徴や考えられる原因、予防などを解説します。ロキソプロフェン(ロキソニン®)や、インドメタシンによる対策も紹介します。

一次性運動時頭痛とは?

一次性運動時頭痛とは、頭蓋内に病気が存在しない状態で、運動によって引き起こされる頭痛のことです。脳のCTやMRI検査をしても異常が見つからない、一次性頭痛(いわゆる頭痛もちの頭痛)のひとつになります。以前は、「一次性労作性頭痛」や「良性労作性頭痛」という名前で呼ばれていました。

一次性運動時頭痛の特徴
一次性運動時頭痛は通常、身体的に激しい運動を続けることで起こりやすいです。また、運動中に頭痛がする人の多くは、ズキンズキンという脈動性の痛みを訴えていることも報告されています。ただし、思春期ではあまり脈動性は顕著ではありません。

頭痛が持続する時間は数分から48時間と個人差があるものの、半数は5分以下で治まるとされています。

一次性運動時頭痛の診断基準
『国際頭痛分類第3版(ICHD-3)』では、一次性運動時頭痛の診断基準を次のように定めています。

【A】BおよびCを満たす頭痛が2回以上ある。
【B】激しい身体的な運動中または運動後にのみ誘発されて頭痛が起こる。
【C】頭痛は48時間未満の持続である。
【D】国際頭痛分類第3版(ICHD-3)にある病気で、ほかに最適な診断がない。

一次性運動時頭痛であるかどうかは自己判断せず、医療機関で診断を受けましょう。くも膜下出血や可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)といった、似た特徴をもつ病気の可能性を除外する必要があります。


一次性運動時頭痛が疑われる目安
一次性運動時頭痛が疑われる目安としては、次のものが挙げられます。

【A】「1」か「2」のいずれかに当てはまる。
「1」…BとCに当てはまる頭痛を1回でも経験したことがある。
「2」…BとCに加え、ICHD-3の診断基準に該当しない頭痛が2回以上ある。

【B】激しい肉体的な運動中または運動後にのみ誘発されて頭痛が起こる。
【C】頭痛は48時間未満の持続である。
【D】ICHD-3にある病気で、ほかに最適な診断がない。

一次性運動時頭痛が起こる原因

一次性運動時頭痛が起こるメカニズムが明らかになっていないため、現在のところ原因は不明です。しかし多くの研究者は、一次性運動時頭痛の痛みは運動による血管(静脈・動脈)の拡張で起っていると考えています。

なお、一次性運動時頭痛は特定の運動によって起こるものではなく、どのような種類の運動でも引き起こされる可能性があります。特に暑い気候や高所で起こりやすいので、このような環境で運動をする際は注意が必要です。

内頸静脈弁の不全が見られるケースも
一次性運動時頭痛の患者は、内頸静脈弁が十分に機能していないことが多いと報告されています。内頸静脈弁とは、心臓と脳の間を唯一保護する静脈弁です。

内頸静脈弁の機能不全の割合を比較すると、対照群※では20%であるのに対し、一次性運動時頭痛の患者では70%が該当します。そのため、内頸静脈弁の機能不全で頭蓋内のうっ血を招くことが、一次性運動時頭痛に影響を与えていると推測されています。

※対照群…臨床試験において、研究中の新しい治療を受けないグループのこと。

一次性運動時頭痛を予防するには?

『国際頭痛分類第3版(ICHD-3)』では、酒石酸エルゴタミンの服用で一次性運動時頭痛が予防できたケースが報告されています。酒石酸エルゴタミンは、片頭痛などの頭痛治療に使われるお薬に含まれる成分です。酒石酸エルゴタミンを含むお薬は、病院で処方してもらう必要があります。

また、運動を開始する前に非ステロイド系抗炎症薬(アセトアミノフェン、ロキソプロフェンなど)を飲むことが有効とされています。そのため、ロキソニン®やカロナール®などの市販薬でも一次性運動時頭痛の予防が期待できます。

しかし、ほかの病気である可能性を除外し、より安心して薬を服用するためには、まず医療機関を受診することをおすすめします。

一次性運動時頭痛の対策と治し方

一次性運動時頭痛にできる身近な対策や、一次性運動時頭痛で頭が痛くなったとき医療機関で受ける治療について解説します。
身近な対策

運動中や運動後に頭痛が起こる方は、運動量が多すぎないかを見直し、十分なウオームアップをするように心がけましょう。また、運動中にこまめな水分補給をすることも一次性運動時頭痛の対策になるとされています。

頭痛が起こったらすぐに運動を中止して、体に負担をかけないことも大切です。

医療機関による治療について
一次性運動時頭痛に思い当たりのある方は、脳神経内科や脳神経外科、頭痛専門外来を受診するといいでしょう。医療機関を受診すれば、頭痛の原因が分かり、症状に適した薬で治療が受けられます。

インドメタシン(非ステロイド系抗炎症薬)は、一次性運動時頭痛の多くのケースで効果が認められているお薬です。服用し続けることで頭痛の消失が期待できますが、頭痛がなくなるまでは運動を控えるよう、医師から指導を受ける場合もあります。

医療機関を受診する前に「いつから運動中や運動後の頭痛があるか」「どんなふうに、どの程度痛むか」「どのくらい頭痛が持続するか」「ほかの症状はあるか」を伝えられるようにしておくとスムーズです。

運動中・運動後の頭痛にお悩みの方はご相談ください
健康やダイエット、気分転換のために運動を日々の習慣にしている方は多いことでしょう。気持ちよく体を動かしていたのに、頭が痛くなるのはつらいですよね。運動中や運動後の頭痛にお悩みの方は、いしざき脳神経内科までお気軽にご相談ください。

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