「咳をすると頭に響いて痛い」
「咳をすると頭痛がするし、めまいや吐き気がすることもある」
こうした咳による頭痛を繰り返す原因は、一次性咳嗽性頭痛(読み方:いちじせいがいそうせいずつう)かもしれません。今回は、一次性咳嗽性頭痛の特徴や診断基準、対処法について解説します。
一次性咳嗽性頭痛とは
一次性咳嗽性頭痛とは、頭蓋内疾患が存在しない状態で、長時間の身体的運動ではなく、咳やいきみが原因となって引き起こされる頭痛のことです。CTやMRIで脳を検査しても異常が見つからない、いわゆる「頭痛もちの頭痛(一次性頭痛)」のひとつであり、『国際頭痛分類第3版(ICHD-3)』にも記載されています。
『国際頭痛分類第3版』では、神経内科の外来を受診した方で一次性咳嗽性頭痛に該当するのは1%のみと報告されています。この数値だけを見たら、一次性咳嗽性頭痛は珍しい頭痛という印象を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、胸部疾患を扱う外来を受診した咳をする患者に限定した場合、5分の1の方が一次性咳嗽性頭痛だったことも報告されています。そのため一次性咳嗽性頭痛は、咳に悩まされている方にとっては決して珍しい頭痛ではないと考えられるでしょう。
また、一次性咳嗽性頭痛は40歳以上の方によくみられるとされています。
一次性咳嗽性頭痛の特徴
一次性咳嗽性頭痛は、咳やいきみの直後に痛みがピークに達し、数秒~数分で消失することが多いのが特徴です。ただし、痛みの持続時間には個人差があるため、中には軽度~中等度の頭痛が2時間くらい持続する方もいらっしゃいます。
一次性咳嗽性頭痛による痛みは通常、両側性で後頭部に痛みが生じることが多いです。
また、咳をする頻度が高いほど頭痛が重症になる傾向があります。
一次性咳嗽性頭痛に該当する方の3分の2には、めまいや吐き気、睡眠異常といった随伴症状がみられるのも大きな特徴です。
一次性咳嗽性頭痛の診断基準
『国際頭痛分類第3版』では、一次性咳嗽性頭痛の診断基準を次のように定めています。
A)B~Dを満たす頭痛が2回以上起こっている。
B)咳、いきみ、その他のヴァルサルヴァ(=いきみ)手法、あるいはこれらの組み合わせによって頭が痛くなる。
C)頭痛は突発的に起こる。
D)痛みは1秒~2時間持続する。
一次性咳嗽性頭痛を知る目安としてご参考になさってください。また、診断基準のうち、B~Dを満たす頭痛を1回でも経験したことがあり、なおかつ『国際頭痛分類第3版』に当てはまる病気がない場合は、一次性咳嗽性頭痛の疑いがあるとされています。
【咳嗽性頭痛の原因】ほかの病気が潜んでいることも
咳やいきみによる頭痛を繰り返す場合に注意したいのが、別の病気が潜んでいる「症候群としての咳嗽性頭痛」です。
症候群としての咳嗽性頭痛のうち40%は、ある病態または疾患の徴候に関係する症候性であるとされています。症候群としての咳嗽性頭痛の大半は、アルノルド・キアリ奇形1型という病気とされており、頭痛のほか、立ちくらみや視野のかすみなどの症状も引き起こす場合があります。
ほかにも、特発性低頭蓋内圧性頭痛や頸動脈・推骨脳底動脈疾患、中・後頭蓋窩の腫瘍、硬膜下血腫などの病気が咳嗽性頭痛の原因になることもあります。
このように、咳やいきみによる頭痛が病気のサインという場合もあるので、「大丈夫」と自己判断をせず、医療機関を受診しましょう。
小児の咳嗽性頭痛について
小さいお子さんから10代の中高生まで、小児の咳嗽性頭痛では、頭蓋内占拠性病変が50%以上を占めています。そのため、小児が咳やいきみによる頭痛を繰り返している場合、ほかの病気が潜んでいないことが証明されるまでは、症候性と考えるのが一般的です。
子どもが咳やいきみによる頭痛を繰り返しているときも、病気が潜んでいないか確かめるために、医療機関を受診しましょう。
一次性咳嗽性頭痛の対処法・治し方
一次性咳嗽性頭痛の治療には通常、インドメタシン(1日あたり50~200mg)が有効とされています。
一方で、ロキソニン®などの市販の解熱鎮痛剤や処方薬のカロナール®は意味をもたないと考えられています。一次性咳嗽性頭痛による痛みは長時間持続しないことがあるため、これらの薬が効く前に症状が治まる可能性があるためです。
また、頭痛の種類によっては冷やす・温めるといった対処法で症状が軽減する場合があるため、これらの方法を取り入れる方がいらっしゃるかもしれません。しかし残念ながら、一次性咳嗽性頭痛に冷やす・温めるといった対処法が効果を発揮するという報告は、現在のところされていません。
一次性咳嗽性頭痛に有効な薬を使用するためにも、ほかの病気が原因になっていないか調べるためにも、まずは医師に相談しましょう。
咳をすると頭が痛くなる方は当院へご相談ください
咳やいきみによる頭痛を繰り返している方、そして、めまいや睡眠異常といった随伴症状にお困りの方は、いしざき脳神経内科までお気軽にご相談ください。当院では神経内科・内科の専門医が診察いたしますので、頭痛に関する病気から感冒症状(かぜ)が原因の咳・頭痛まで幅広い対応が可能です。
地域のかかりつけ医として、患者さんおひとりおひとりのお悩みやお困りの症状をお伺いいたします。まずは、当院へご来院ください。