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アルツハイマー型認知症とは?知っておきたい初期症状から治療法を詳しく解説

アルツハイマー認知症という病名を聞いたことがある人は多いと思いますが、どのような印象をお持ちでしょうか。

1994年に国際アルツハイマー病協会(ADI)は世界保健機関(WHO)と共に、毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」に制定し、認知症の啓発を行っています。

日本でも2024年1月施行の「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」により、9月21日を「認知症の日」、9月を「認知症月間」として認知症への関心と理解を深める取り組みが行われています。

今回はアルツハイマー認知症について、原因や初期症状、検査内容や治療法まで詳しく解説していきます。

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー認知症は認知症の原因となる病気の一種で、脳内の神経細胞が徐々に死滅し、記憶や思考能力が低下する進行性の疾患です。

アルツハイマー認知症では、脳の一部にたんぱく質がたまることで起こると考えられています。

アルツハイマー病の多くは高齢者における認知症の最も多い原因と言われていますが、65歳未満で発症する若年性アルツハイマー認知症も存在します。

また、「アルツハイマー」という名称は、1906年に51歳で亡くなった女性の脳を解剖し、脳の神経細胞の異常を発見したアロイス・アルツハイマー博士の名前が由来となっています。

アルツハイマー病と認知症の違い
アルツハイマー病と認知症は混同されがちですが、アルツハイマー病は認知症を引き起こす原因の一つです。認知症は病名ではなく認知能力や記憶障害により、社会生活に支障をきたす状態を指します。

認知症にはさまざまな種類がありますが、代表的な4つの疾患は以下の通りです。

●アルツハイマー型認知症
●血管性認知症
●レビー小体型認知症
●前頭側頭型認知症

脳梗塞や脳出血などの脳卒中が原因で脳の神経細胞が破壊される血管性認知症、パーキンソン病の症状が伴うことが特徴のレビー小体型認知症、人格変化や言語障害が主な症状である前頭側型認知症が挙げられます。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー病は脳の神経細胞が徐々に破壊され、記憶や認知機能が低下する進行性の病気です。

原因にはさまざまな要因が関与しており、加齢や遺伝因子、環境的な要素などが複雑に絡み合っています。

加齢に伴う脳の変化
アルツハイマー型認知症の最大のリスク要因の一つは加齢であり、年齢を重ねるごとに発症率が高くなる傾向です。

年齢を重ねるにつれてアミロイドβなどの異常タンパクが蓄積し、ニューロン(神経細胞)の死滅が発生し、認知機能に関する脳の働きが徐々に低下するのが原因と考えられています。

遺伝因子
遺伝的な要因もアルツハイマー型認知症の発症に影響を与えることが知られています。

家族性アルツハイマーでは、両親のうち1人が家族性アルツハイマー病遺伝子変異を持っていた場合、子どもは50%の確立で発症すると言われています。

しかし、家族性アルツハイマー病は全患者の1%以下と言われているので、むやみに心配する必要はありません。

その他の因子
アルツハイマー認知症の原因として、喫煙や過度の飲酒、運動不足などの生活習慣の乱れも発症リスクを高めることが知られています。また、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱えている人も、発症リスクが高まるとされています。

さらに、社会的に孤立や脳に刺激を与える活動が少ない場合も、認知機能の低下につながる可能性があります。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー病は進行性の病気であり、症状は徐々に悪化していきます。

症状の進行段階は初期、中期、後期に分けられ、それぞれの段階で異なる特徴を説明します。

初期症状
アルツハイマー型認知症の初期症状として代表的なものに「物忘れ」があります。

昔の思い出話を忘れることはありませんが、短期的な記憶をつかさどる脳が萎縮するため、最近の出来事や会話の内容が思い出せないことが増えてます。

他にも、初期に見られる症状の例がこちらです。

●同じことを何度も聞いてくる
●待ち合わせに時間通りに来れない
●身だしなみに無頓着になる
●財布や通帳などの大事なものをなくす
●性格が変化する

アルツハイマー型認知症の初期では、日常生活に大きな支障はありませんが、本人や周りの人が違和感を感じ始める段階です。

中期症状
中期になると記憶障害がさらに進行し、人との会話や行動に影響が出始めます。

●食事をしたことを忘れてしまう
●見慣れた近所で迷子になる
●1人で着替えができなくなる
●言いたい言葉が出てこなくて、イライラする

他にも、身の回りの世話が必要になったり、徘徊したりなどの安全管理が必要になることが多くなります。

後期症状
アルツハイマー型認知症の後期になると、言葉を忘れて会話が出来なくなり、最終的には歩くことが出来ずに寝たきり状態になります。

●同居している家族の顔や名前を忘れる
●トイレ介助が必要で、失禁が増える
●排泄物を手で触り、壁にこすり付ける
●食べ物でないものを食べる
人格の変化や強い感情の起伏が見られ、コミュニケーションが難しくなります。また、日常生活のすべての面で介護が必要となり、家族などの介護負担が大きくなるため、介護サービスの導入や施設入所の検討が必要です。

終末期では誤嚥性肺炎や食欲不振に伴う衰弱死が多いとされています。

アルツハイマー型認知症の検査

アルツハイマー型認知症を診断するためには、以下のような検査を用いることが多いです。

●本人や家族への問診
●血液検査
●神経心理学テスト
●脳画像検査

それぞれの検査方法について、詳しく解説します。

本人や家族への問診
最初にアルツハイマー型認知症を疑われる時に行われるのは、本人や家族への問診です。

物忘れや言動、日常生活でアルツハイマーを疑う行動などについて詳しく聞き取ります。家族歴や生活習慣、既往症についても確認し、認知機能の低下の原因を探ります。

本人からの情報だけでなく、家族や介護者からの日頃の様子が判断材料となるため、気になる言動は日常的にメモしておくと効果的な問診となるでしょう。

血液検査
アルツハイマー型認知症の検査として、「軽度認知障害(MCI)」といった認知症の前段階状態かどうかを調べる血液検査をする場合があります。

MCIスクリーニング検査と呼ばれる血液検査では、脳内に認知症の原因となるタンパク物質が蓄積されやすい状態かどうかを調べる検査です。加齢に伴い認知症や軽度認知障害(MCI)のリスクは高まるため、定期的に検査を受けることで、早期発見となるでしょう。

ただし、MCIスクリーニング検査は健康保険適応外で、自由診療となります。検査の必要性については、主治医への相談をおすすめします。

神経心理学テスト
神経心理学テストは記憶力や集中力、問題解決能力といった認知機能を詳細に評価するためのテストです。

簡単な質問をしたり、指示された図形を描いたりなどして認知機能を確認し、脳のどの部分が影響を受けているかを評価します。

改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)
長谷川式簡易知能評価(以下、長谷川式認知症スケール)は、認知症のスクリーニング目的で用いられる簡易的な認知機能テストです。

記憶力を重点評価する検査で、9つの項目を30点満点で構成されています。
●年齢
●見当識
●3単語の即時記銘と遅延再生
●計算
●数字の逆唱
●物品記銘
●言語流暢性

20点以下の場合は認知症の可能性が高いと言われていますが、長谷川式認知症スケールだけで、認知症の診断はできません。

MMSE(ミニメンタルステート検査)
アメリカで開発されたテストです。
長谷川式認知症スケールより問題数が多く、11の評価項目を15分程度かけて解いていきます。

●時間の見当識
●場所の見当識
●3単語の即時再生と遅延再生
●計算
●物品呼称
●文章復唱
●3段階の口頭命令
●書字命令
●文章書字
●図形模写

MMSEでは30点満点の検査で23点以下であれば認知症を疑い、27点以下は軽度認知障害(MCI)が疑われます。

口頭での回答のみの長谷川式認知症スケールと比べて、文章の記述や図形描写などの筆記があるのが特徴です。

ADAS検査
ADAS検査は、アルツハイマー型認知症の中核症状の変化の評価を目的とした認知機能検査です。記憶・言語・行為の3領域の評価と、精神状態などを評価する2つの下位尺度で構成されています。

ADAS検査は認知症の重症度を判定するのではなく、継続的に検査を行い、得点から認知機能の病状変化を評価する検査です。70点満点の検査で高得点なほど、認知機能が低いという評価になります。

脳画像検査
脳画像検査は、アルツハイマー病の診断において非常に重要です。

アルツハイマー型認知症ではMRIやCTスキャンを用いて、脳の萎縮や血流低下の有無や状態を検査します。アルツハイマー型認知症では「海馬」と呼ばれる脳の部位とその周辺が、若年性アルツハイマー病の場合は頭頂葉の萎縮が強い傾向です。

認知症の症状と合わせて評価し、別の病気が隠れていないか鑑別しながら診断していきます。

脳の萎縮や異常な変化を確認します。また、PETスキャンでは、アミロイドβやタウタンパクの蓄積を直接可視化することができ、アルツハイマー病の診断に役立ちます。これらの画像検査により、脳の状態を詳しく調べることができます。

アルツハイマー型認知症の治療

結論として、アルツハイマー型認知症の根本的な治療はありません。

現在の医療では病気の進行を完全に止めることはできませんが、薬物療法と非薬物両方により、症状の改善や進行遅延が期待できます。

薬物療法
アルツハイマー型認知症に対して、現在は内服薬や外用薬含めて4種類の薬剤が承認されており、患者さまの症状に合わせて処方されます。

●ドネペジル(アリセプト)
●ガランタミン(レミニール)
●リバスチグミン(イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ)
●メマンチン(メマリー)

記憶障害や認知障害などの症状を遅らせたり和らげたりすることが目的で、認知症の根本的に治療することはできません。

症状の軽いうちから薬を飲み始めると、その状態を保ち続ける効果が期待されます。本人と家族との診察の上で、症状の進行度や周辺症状に応じて、薬を使い分けられます。

非薬物療法
アルツハイマー型認知症では薬剤療法だけでなく、リハビリや運動療法などを通じて、認知機能の維持や症状の進行を緩やかにすることを目指します。

●認知リハビリテーション
●運動療法
●音楽療法
●回想法

認知リハビリテーションや脳を刺激する活動を取り入れることで、記憶力や判断力の維持が期待されます。また、運動療法や作業療法では患者さまの興味に合わせた活動を取り入れることで、脳の活性化や精神の安定が期待できます。

さらに、患者の周囲のサポートや環境整備により、ストレス軽減や安心感を提供できるので、アルツハイマー型認知症の症状への対処としては有効です。

認知症にお悩みの方は当院にご相談ください

アルツハイマー型認知症は初期症状である「もの忘れ」から始まり、進行すると日常生活でのサポートが必要となります。

現代の医療では認知症を完治させるのは難しいものの、早期発見・早期治療により進行を遅らせ、患者さまとご家族の生活を少しでも維持することが可能です。

いしざき脳神経内科では、CT検査を活用して脳の状態を詳しく把握できます。気になる症状がある場合は、ぜひ当院にご相談ください。

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